フランツ・カフカの本の解説に、グレゴール・ザムザは虫に変身しても、心は人間のままだって書いてあった。肉体だけが人間ではなくなった、と。
 心は人間なので、感情も湧いてくるし、言葉を発しようとするのだけど、肉体が虫になっているから、人間の声になって言葉が出てこない。
 
 そうか、声というのは人間の肉体がないと発せられないのか。虫には発声器官もないですから。

 声というのは不思議です。あ、い、う、え、お、と声になって音声になって出てくる言葉は肉体の発声器官から発せられて音波となって空気中を振動します。物理的なものです。

 しかし、わたしたちが心の中で想ったり、考えたりする言葉は、内言語といいますが、肉体の発声器官も関係なしに頭の中で発音されます。

 頭の中で発音される内言語は、心の領域に属するもので、声となって音声となって出てくるときには肉体の力を借りなければなりません。
 
 人間が表現をするとき、自己の外の世界に向かって表現をするときに発せられる、声というものが、心と肉体の合作であるということをカフカの本の解説から強く実感したのでした。

 

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